中食に求められる“でき立て感”の提供。
包材にも、ソフト開発力が必要です。
料理離れが進む昨今、中食は技術と時間を省略したい生活者には無くてはならない存在です。でも、生活者はわがまま。一方では、でき立て感のある料理を楽しみたいと思っています。そんな中、昨年、スーパーやコンビニがこぞって販売した家庭料理の「キット商品」は、中食では味わえない、でき立て感がウリでした。この商品、パックの中に一人分の生の食材と合わせ調味料、レシピの紙が入っています。例えれば、料理のプラモデル版。説明書にそって部品を組み立てるがごとく、レシピにそって食材と調味料を合わせ、加熱調理します。確かに便利ですが、ある程度の調理技術が必要で、鍋やフライパンなどの道具、料理を盛り付ける皿も用意しなくてはならず、その意味では、手軽に楽しめる簡便食とは言い難いようです。簡便性が中途半端で、おいしさもいまひとつ。加えて、どんな生活者をターゲットにしているのか、今ひとつ分かりにくく、そのせいか、“画期的”ともてはやされた商品にもかかわらず、ヒットの声は聞かれませんでした。
高齢化と貧富の二極化が進む社会において、今後、調理をする人は確実に減少します。同時に、“手間はかけずにでき立て感、手作り感のあるおいしい料理を”という生活者のニーズはますます高まるものと思います。特に、火事が心配で火を使えない高齢者、料理をする体力と知力に乏しい高齢者に対して、中食ではなかなか味わうことができない作り立てのおいしさ感をどんなカタチで提供できるのか?それが、食業界の課題になっています。
そんな中、調理機能付き電子レンジ対応容器をスーパーの中食コーナーで見つけました。容器に、生の食材と調味料を入れて電子レンジで加熱するだけで、料理ができ上がるという代物です。現在、首都圏の一部高級スーパーにおいて、この容器に生の食材を入れた商品が販売されています。商品の種類は、ハンバーグやロールキャベツなどの肉料理と、煮魚やアクアパッツァなどの魚料理。価格は2人分で500円台〜1500円台と幅広く、スーパーの担当者が、その日に仕入れた食材で内容が変わるようです。
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ハンバーグ 調理前 |
ハンバーグ 調理後 |
因みに、私が買ったものは、金目鯛の煮付け。生の金目鯛の切り身2切れ、しょうがの薄切りとさやえんどうが入り、小袋のたれがついています。このたれを回しかけて水を加え、きちんとふたをして電子レンジで4〜5分加熱すればでき上がりです。“鮮度抜群の金目鯛が、甘辛味のプリプリの煮付けに・・・”と、ワクワクしながら待ったのですが、金目鯛の身はふっくらプリプリで申し分ないものの、味の浸み込みが弱く、こってり甘辛味の期待はあっさり裏切られました。
電子レンジのように短時間加熱が得意な調理器具では、味の浸透という煮物特有の調理効果を期待するのは無理なのでしょうか。
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金目鯛煮魚 調理前 |
金目鯛煮魚 調理後 |
”画期的”と言われるこの種の商品は、ハード先行の開発になりがちです。食は、おいしくできて、初めて商品化に成功したと言えます。先のキット商品も、味と完成度はいまひとつ。この容器も同様です。メーカーにも、卸にも、包材としての価値ではなく、商品としての価値の提案が求められる昨今。ソフト開発力を持つことが、ますます必要になっているようです。 |